労基法その他労働法
当日の朝に年次有給休暇を請求されました。認めなければならないでしょうか。
労基法第39条第5項では、年次有給休暇は労働者の請求する時季に与えられなければならないと規定し、同項但し書きで、その請求する時季が事業の正常な運営を妨げると認められる場合には、使用者は他の時季に年次有給休暇を与えることができる(「時季変更権」を行使できる)とも規定しています。
当日の朝に年次有給休暇を請求された場合においては、使用者が「時季変更権」を行使するか否かの判断をする時間的な余裕を全く与えずになされた申請であるため、「時季変更権」を行使することが不可能であることが考えられます。また、始業時刻直前に代替要員の確保や人材配置の変更をしなければならないことを考えると、認めなくても差し支えないものと思われます。
また、労働基準法では、年次有給休暇は「労働日」を単位として付与され、この「労働日」とは暦日計算によるものとされ、原則午前0時からの24時間で「1労働日」となります。そのため申請が、当日朝ということは、たとえ始業時刻前であっても、すでに午前0時を過ぎて「労働日」が過ぎてからの事後の申請となるため、この点からも認めないとすることは可能です。
ただし、就業規則等によって当日申請を認めている場合や日頃から年次有給休暇への振替を認めている場合はこのような取り扱いはできないので注意が必要です。
更新日 2021年10月20日
労働基準法第39条第5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
年次有給休暇の「1労働日」の解釈
(昭26.9.26 基収第3964号)
法39条の「労働日」は原則として暦日計算によるべきものであるから、一昼夜交替性の如き場合においては、1勤務を2労働日として取扱うべきである。また、交替制における2日にわたる1勤務及び常夜勤勤務者の1勤務については、当該勤務時間を含む継続24時間を1労働日として取り扱って差支えない。
(此花電報電話局事件 最高裁一小 昭57.3.18判決)
「労働者の年次有給休暇の請求(時季指定)に対する使用者の時季変更権の行使が、労働者の指定した休暇期間が開始し又は経過した後にされた場合であっても、労働者の休暇の請求自体がその指定した休暇期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかったようなときには、それが事前にされなかったことのゆえに直ちに時季変更権の行使が不適法となるものではなく、客観的に右時季変更権を行使しうる事由が存し、かつ、その行使が遅滞なくされたものである場合には、適法な時季変更権の行使があったものとしてその効力を認めるのが相当である。(以下略)」