労基法その他労働法
上長が指導のために行った言動により、従業員が精神的な苦痛を受けたため体調を崩し休職を希望する旨の申し出がありました。これからどのような対応をしていけばよろしいでしょうか。
職場のパワーハラスメント(同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為)があったという申告があった場合、その事実の確認をすみやかに行うことが求められます。
パワーハラスメントは次の6類型に分類されます。
①精神的な攻撃(脅迫、名誉棄損、侮辱、ひどい暴言)
②身体的な攻撃(暴行、傷害)
③過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
④人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
上記6つのいずれかに該当する言動があったのかを、今一度、当該従業員、上長(行為者)、その言動を見たり聞いたりしていた第三者に対してヒアリングを行ってください。あくまで労働者の主観だけでなく、平均的な労働者の感じ方も判断基準として調査を行い、結果を踏まえ、会社としての判断を当該従業員に説明することになります。上長の言動が業務上適正な指導であると考えられる場合は、パワーハラスメントには該当しません。一方で、その言動が上記6つのいずれかに該当する場合は注意、上司からの謝罪、人事異動や懲戒処分などの対応が考えられます。
そしてどのような結果になったとしても、再発防止の対策をするとともに、管理職や従業員への研修を中心に社内におけるハラスメントに関する情報の周知や啓蒙活動を行い予防に取り組んでいくことが重要です。
2020年7月1日 社会保険労務士 杉山 定広
【労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律】
(雇用管理上の措置等) 第三十条の二
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上 必要な措置を講じなければならない。