定年後の再雇用、賃金75%減は違法 高裁判決が確定
定年を迎える前に再雇用の条件として、賃金を退職前の約25%とする(約75%減額する)と会社が提示したのは不法行為だとして、元従業員の女性が、勤めていた食品会社に損害賠償を求めた訴訟で、平成30年3月1日、最高裁が原告、会社双方の上告を不受理とすると決定しました。これにより、定年後の極端な労働条件の悪化は、65歳までの継続雇用を義務付けた高年齢者雇用安定法の趣旨に反するとして、会社に慰謝料100万円を支払うよう命じた2審・福岡高裁判決が確定しました。
平成29年9月の福岡高裁判決によると、食品会社で正社員として働いていた女性は、平成27年3月末に60歳で定年を迎えた際、時給制のパート勤務とし、月給換算で定年前の賃金の約25%とする労働条件を提示されたとのことです。女性はフルタイム勤務を希望したため、合意に至らず、退職を余儀なくされました。福岡高裁は、再雇用(継続雇用)の際の労働条件について、「定年前後の労働条件の継続性・連続性が一定程度確保されることが原則」との解釈を示したうえで、収入が75%も減る労働条件の提示は「生活への影響が軽視できないほどで高年法の趣旨に反し、違法」と判断しました。
高年齢者雇用安定法では、65歳未満の定年後も、希望者については65歳までの雇用を確保することを義務付けていますが、労働条件の取り決めに具体的な決まりはありません。 今回、最高裁が、「定年前後の労働条件の継続性・連続性が一定程度確保されることが原則」という高裁の考え方を支持したことは、定年後の継続雇用をめぐる企業の実務に影響を及ぼすことになりそうです。 定年後の継続雇用について、どの程度の賃金の減額なら認められるのかは明確ではないですが、業務量などに応じて、合理的な範囲で賃金を減額し、雇用保険の高年齢雇用継続給付を活用しつつ、最終的には従業員の納得を得ることが重要といえそうです。