事業主証明による被扶養者認定の取扱いが恒久化
パート・アルバイトの就労調整問題として注目されてきた「年収の壁」対策に関し、令和5年度より実施されていた「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」の取扱いが、時限措置から恒久的な制度へ移行されました。
この制度は、健康保険の被扶養者認定において、繁忙期などの一時的な収入の増加により年収が130万円を超えた場合でも、事業主が「一時的な事情」であることを証明すれば、引き続き被扶養者として認定される可能性があるというものです。この制度の恒久化により、これまで「扶養の壁」を意識して労働時間を抑えていた従業員も、安心して希望どおり働ける環境が整い、事業主にとっても、安定した労働力の確保や定着率の向上が期待されます。一方で、事業主による証明は法的責任を伴う重要な行為です。証明書を発行する際には、収入増加が一時的であることを示す客観的な資料(シフト表や業務命令書など)を整備し、その内容を適切に記録・保管しておくことが重要です。安易な証明は不正とみなされるおそれがあるため、慎重な対応が必要です。なお、事業主の証明による被扶養者認定は「一時的な事情」として行うものであり、同一の者については原則として連続2回までが上限とされています。ここでの「1回」とは、被扶養者の収入確認にあたって事業主の証明を提出し、保険者が一時的な収入変動であると認めたケースを指します。また、「一時的な収入増加」には明確な上限額が設定されておらず、金額ではなく「増加の理由が一時的かどうか」に基づいて判断されます。企業は証明発行の基準や手続きを社内で統一し、従業員に対しても丁寧に説明することで、トラブルの防止と公平な運用につなげることが求められます。
今回の制度改正は、企業と従業員の双方にとって「働きやすさ」を支える大きな一歩となります。今後は、正確な運用ルールの整備に加え、現場での理解促進と適正な証明実務が鍵となります。
【厚生労働省HP】「年収の壁・支援強化パッケージ」における、社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外及び事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いについて

