労務管理事例集

労基法その他労働法

会社でアパートの1室を借り社宅として従業員に利用させようと思います。賃料の一部を家賃として給与から天引きしようと考えていますが問題ないでしょうか。

 給与から控除する場合、使用者は社会保険料や税金といった法律で定められているものについては労働者の同意がなくても控除することが出来ます。しかし、それ以外のものを控除する場合は「労使協定」が必要となります。また、トラブル防止やスムーズな入退去のために「社宅規程」を作成するのが一般的であるといえます。

 労働者の同意なしに使用者が給与から控除できるもの(法定控除)は「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」「所得税」「住民税」のみとなっています。それ以外の「家賃」「親睦会費」「組合費」「財形貯蓄」「生命保険料」などを給与から控除するためには、会社と従業員の代表との間で給与控除に関する「労使協定」を結ぶ必要があります。従業員の過半数が組織する労働組合がある場合は、会社と労働組合の間で結ぶことになります。この「労使協定」は掲示や書面の交付等により労働者に周知させなければなりません。ただし、この協定は労働基準監督署に届け出る必要はありません。

 また、一緒に作成したい「社宅規程」には、社員と会社の負担金額と負担範囲や入居者の範囲、退去条件、規程違反があった時の対処などといった内容を盛り込み、就業規則の変更と合わせて整備すると良いでしょう。

2020年2月18日 社会保険労務士 堀 良司

【労働基準法第24条 第1項】

(賃金の支払)

 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

【労働基準法第106条 第1項】

(法令等の周知義務)

 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第18条第2項、第24条第1項ただし書、第32条の2第1項、第32条の3第1項、第32条の4第1項、第32条の5第1項、第34条第2項ただし書、第36条第1項、第37条第3項、第38条の2第2項、第38条の3第1項並びに第39条第4項、第6項及び第9項ただし書に規定する協定並びに第38条の4第1項及び同条第5項(第41条の2第3項において準用する場合を含む。)並びに第41条の2第1項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

【労働基準法 施行規則 第52条の2】

法第106条第1項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。

1.常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

 2.書面を労働者に交付すること。

 3.磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

更新日:2020年02月18日
ページトップへ