労務管理事例集

安全衛生

主治医より療養の継続が望ましいという診断をされた持病持ちの従業員がいるのですが、その従業員は労務に支障が無いので働きたいと申し出ています。その従業員の申告通り見た目や言動も健常である様に見えるのですが、労働させても問題ないでしょうか。

 会社には労働契約法第5条において安全配慮義務が課せられており、生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮が求められています。具体的には、業務に係る施設・設備の点検や修繕、職場の風紀改善、従業員の労働時間の管理、目に見えない疾患やメンタルのケア等(健康への配慮も含めた)措置を講ずることが挙げられます。これらを怠り、症状が悪化してしまった場合には、安全配慮義務違反とされ損害賠償請求に繋がる可能性があります。  

 今回のケースでは従業員の申出と医師の意見が全く異なり、この状況で会社は従業員が労務に服することができるのか判断がしづらい状態です。そのため本人の希望であっても主治医の意見を重視し療養に専念させることのほか、主治医以外に産業医や会社指定の医療機関へ勤務体系や労働内容等の情報提供を行い、さらに意見を求めることも考えられます。

 また一般的に休職及びその後復職までの詳細なルールを就業規則に記載することで、トラブルを防ぐことができます。例えば会社は復職の判断のため、主治医の他に会社指定の医療機関を受診させることや、もし従業員が会社指定の医療機関を受診しない等の場合は、就労可能の可否が判断できない為、休職期間の延長を検討することも予め記載してもよいでしょう。

2020年6月30日 社会保険労務士 杉山 定広

労働契約法 第5条 

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

更新日:2020年06月30日
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