労務管理事例集

労基法その他労働法

就業規則で、昼の休憩時間について「12~13時の1時間、一斉に付与する」と定めていますが、昼食時の混雑を避けるため、休憩時間を勝手にずらして取得する社員がいます。懲戒処分にできますか。

 労働契約法15条では、使用者が労働者を懲戒する場合、その懲戒処分が、「労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められなければ、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効であると定めています。これを踏まえると、業務に及ぼす影響、会社に与えた損害が全くないのであれば、懲戒処分を基礎づけるような実質的な違法性を見いだすのは困難であるといえます。しかし、休憩時間が一斉に付与されているのは全員が同時に勤務しないと機能しない職場であるため、当該労働者が休憩時間をずらすことにより業務の非効率化・会社の業績低下をもたらすなどの実害が生じる場合は、単なる規律違反ではなく実質的な違法性が認められ、懲戒処分する正当な理由が認められます。もしも労働者の動機に何らかの害意が認められるのであれば、就業規則に違反したとして注意・指導から始めて、それでも改まらなければ、懲戒処分を科すことも可能と考えられます。当該労働者の動機、業務に及ぼした影響、損害の程度を検討することが最重要であり、その内容に応じて対応の方法が変わる案件であるといえます。

2020年11月24日 社会保険労務士 堀 良司

更新日:2020年12月03日
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