労務管理事例集

労基法その他労働法

正規雇用の女性従業員が妊娠し、負担の少ない部署へ異動したいと申し出があったので、産前休業に入るまでの間、営業職から事務職へ異動させました。育児休業明けには女性社員を本来の営業職へ戻そうと思っていますが、もし女性従業員が本来の部署とは異なる事務職への異動を申し出た場合は、会社はそれを受け入れなければいけないのでしょうか。

 厚生労働省の指針(平成21年厚生労働省告示第509号)として、「育児休業及び介護休業においては、原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮すること」とされており、育児介護休業法第二十二条では、「育児休業後における就業が円滑に行われるようにするため、必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定められています。 

 今回のご質問のように育児休業を終了した従業員が、本来の部署とは異なる事務職への異動を希望する旨の申し出があったときは、その従業員の意見を聞き、合理的な理由であれば受け入れが可能か一度検討してみてください。その希望に沿えず、その従業員を原職に復帰させざるを得ないとしても、育児休業後に大きな負担がかからぬよう、職場環境の整備に努めることは必要です。

 また、希望する従業員が育児休業を円滑に取得でき、また職場復帰の支援のため、あらかじめプラン(育児休業復帰支援プラン)を策定することをお勧めします。このプランにより、休業を開始するまでの間の効率的な引継ぎ業務が遂行され、休業中の職場に関する情報の共有を図り、休業する従業員のニーズを会社が把握することができます。従業員は、育児休業の取得は勿論、育児休業終了後の職場復帰への支援が明確となり、安心して休業することができ、会社としてもこのプランを実行することで職場全体のマネジメントに役立つことが期待されています。

 2021年7月12日  特定社会保険労務士 杉山 定広

【平成21年厚生労働省告示第509号 第2 7項】 

第2 事業主が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針となるべき事項

 7 法第22条の規定により育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置とその他の雇用管理に関して必要な措置を講ずるにあたっての事項

 (1) 育児休業及び介護休業後においては、原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮すること。

 (2) 育児休業又は介護休業をする労働者以外の労働者についての配置その他の雇用管理は、(1)の点を前提にして行われる必要があることに配慮すること。


 【育児介護休業法第22条】

 事業主は、育児休業申出及び介護休業申出並びに育児休業及び介護休業後における就業が円滑に行われるようにするため、育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

更新日:2021年07月12日
ページトップへ