労務管理事例集

労基法その他労働法

従業員から退職届が提出されて、人事部長が受理したのち、その従業員から退職届の撤回の申し出がありました。この退職届は有効なのでしょうか。

 従業員の辞職の意思表示(退職届)を人事部長が受理した段階で、その意思表示の効力が成立するため、原則として退職届の撤回をすることはできません。当事者の一方が契約の解約について意思表示したのち、これを撤回することは当該契約を継続することになり、このように意思表示が二転三転しまうことを、民法では認めていないからです(民法540条2項)。労働者の意思により一方的に退職を通知したとき(使用者の承諾の有無にかかわらず退職する意思があるとき)は、会社にその意思が到達した段階で成立するため、それ以後の撤回は不可能になります(民法627条1項、民法628条)。

 しかし、意思表示を受領すべき権限者にその退職届が届く前や受理する前に、その従業員が撤回の申し出をしたときは、まだその意思表示の効力が有効に成立していないため、撤回をすることは可能です。また、個別の案件について検討した結果、その退職届の撤回を例外的に会社が認めることも可能です。   

2021年7月26日 特定社会保険労務士 杉山定広

(解除権の行使) 民法540条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。

 2 前項の意思表示は、撤回することができない。

 

(期間の定めのない雇用の解約の申し入れ)

 民法627条 当事者が雇用の期間の定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。


 (やむを得ない事由による雇用の解除)

 民法628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

更新日:2021年07月19日
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