労務管理事例集

労基法その他労働法

会社の始業時刻に間に合わず、遅刻した社員から「遅刻した1時間分の残業をするので、帳消し(相殺)にしてほしい」と言われました。そのような処理を行うことについて法的に問題はないでしょうか?

 労働時間を延長しても実労働時間が(遅刻や早退等の理由で)8時間(変形労働時間制は導入制度による)を超えなければ、原則として時間外労働とはなりません。この場合、遅刻時間を残業時間で相殺することに問題ないものと考えられますが、就業規則の定めによっては、1時間の遅刻控除計算と1時間の時間外労働手当計算(原則として割増無しの法定内超過勤務扱いで構いませんが、就業規則の定めによっては割増が必要となる場合があります)を別々に要する場合があります。したがって、どのような取り扱いをするかについてあらかじめ就業規則で明確にしておくことが望まれます。なお、お問い合わせのケースでは、遅刻したことを理由に必要のない残業を認める必要は、そもそもありません。

 遅刻と残業の相殺処理については同日間内でのみ有効であり、遅刻分を他の日に発生した残業で相殺を行うことは違法(労働基準法第37条に抵触)となる点にはご注意ください。

2022年1月19日 特定社会保険労務士 杉山定広

【労働基準法第37条】

 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

更新日:2022年01月19日
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