労務管理事例集

安全衛生

従業員が通勤中に交通事故に遭いました。保育所へ子供を迎えに行く際、自らの不注意で事故を起こしたそうです。普段は共働きの配偶者が迎えに行っており、この日だけ当該従業員が迎えに行ったとのことで通常とは異なる通勤経路を通っていますが、そういった場合でも通勤災害となるでしょうか。

 労働者が通勤を中断したり経路から逸脱したりすると、それ以後の事故は通勤災害になりません。しかしながら、日常生活上必要な行為等のため中断・逸脱したときは、経路復帰後の事故は通勤災害の対象になります。この「日常生活上必要な行為等」は労災保険法施行規則第8条に例示されていますが、「子どもの送り迎え」について明確に触れた部分はありません。一方行政解釈(平27・3・31基発0331第21号)には、「他に子供を監護する者がいない共稼労働者が託児所、親せき等にあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となるものと認められる」と記載があります。つまり、保育所への送迎のために回り道等をしても、その経路全体が「合理的な経路」とみなされると考えられます。 

 したがって、ご質問の場合、配偶者が就業者(共働き)であり、かつ、一般的に用いられる交通手段(明らかに合理性を欠く方法を除く)により子どもを迎えに行く場合には、当該移動は「合理的な経路及び方法」による移動に該当し、「通勤災害」として労災保険の適用が認められる可能性は高いと考えられます。 


2023年7月26日 社会保険労務士 堀 良司

【労災保険法第7条第3項】

労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。 

【労災保険法施行規則第8条】 

第八条 法第七条第三項の厚生労働省令で定める行為は、次のとおりとする。

一 日用品の購入その他これに準ずる行為 

二 職業訓練、学校教育法第一条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為 

三 選挙権の行使その他これに準ずる行為 

四 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為 

五 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)

更新日:2023年09月13日
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