労務管理事例集

安全衛生

安全靴は必ず会社が全額負担しないといけないものなのでしょうか。

 法律上は作業環境により着用を義務付けているのみであり、費用の負担までは定められておりません。

 ただし、労働者に負担をさせる場合は就業規則に「負担をさせることに関する事項」を定め、周知し届出をすることが必要となります。具体的には負担割合や範囲、支給か貸与なのか等、具体的なルールを決め、労使間で話し合い、規則を整備する流れになります。安全靴は退職後も労働者の所有物である点や終業後私的利用することができる点、靴に関しては衛生面的に他人に再貸与することが難しいことから、労働者に自己負担させる合理的な労働条件として認められやすい傾向にあります。

 ただし、人材確保の観点からは自己負担が発生することで従業員のモチベーション低下の要因になりうる点や、自己負担を理由にして、劣化した靴を使用し続けたことにより労災が発生し、会社の安全配慮義務を全うできないこと、従業員が購入した安全靴がそもそも求められている安全基準を満たしていない等も考えられるため、業務上必ず必要なもの又は法律上着用が義務付けられているものに関しては、会社の負担にて準備し、労働者に提供することをお勧めします。

2024年4月17日 特定社会保険労務士 杉山定広

労働安全衛生規則第百十条

事業者は、動力により駆動される機械に作業中の労働者の頭髪又は被服が巻き込まれるおそれのあるときは、当該労働者に適当な作業帽又は作業服を着用させなければならない。


労働安全衛生規則第五百五十八条

事業者は、作業中の労働者に、通路等の構造又は当該作業の状態に応じて、安全靴その他の適当な履はき物を定め、当該履はき物を使用させなければならない。


労働基準法第八十九条第一項第五号

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。


五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

更新日:2024年04月24日
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