労務管理事例集

労基法その他労働法

弊社は1ヶ月単位の変形労働時間制(変形期間は毎月1日から月末まで)を採用しており、前半後半に分けてシフトを決めています。前半部分はシフト開始の前月20日までに後半部分は当月10日までに作成し、従業員に公開していますが、運用方法は問題ないでしょうか。

 1ヶ月単位の変形労働時間制で変形期間を1ヶ月とする場合は、予め1ヶ月分のシフトを決める必要があります。そのため今回のケースのようなシフトの決め方では正しい運用方法と言えず、1ヶ月単位の変形労働時間制そのものが無効となります。1ヶ月単位の変形労働時間制は、原則の法定労働時間に対して変則的な取り扱いをする制度です。この制度が認められるためには、労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより規定すべき事項(変形期間における各日・各週の労働時間もここに含まれています)を定めておき、労使協定を締結したとき又は就業規則を作成・改正したときは、労働基準監督署へ届け出ることが必要です。裁判等で争われた際は厳格に要件を満たしているかチェックされます。要件を満たしていないまま制度を運用されると、未払い残業のリスクを抱え続けることになりますので、就業規則を見直し、変形期間を2週間とするなど実態に合った制度を導入することをお勧めします。

2024年11月21日

労働基準法 第三十二条の二

 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。


「日本レストランシステム事件」東京地判 平22.4.7

 アルバイト店員が変形労働時間制の無効を訴え、残業代の支払いを求め争われた裁判であり、東京地裁は半月ごとの勤務表しか作成されていない場合は労働基準法第三十二条の二にある「特定された日」、「特定された週」に該当せず労働基準法の要件を満たしていないとされ、1 ヵ月単位の変形労働時間制を無効とし、不足分の残業代を支払うよう命じた。

更新日:2024年11月21日
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