労務管理事例集

労基法その他労働法

給与振込口座として従業員に会社の取引銀行に給与振込口座の開設を指示することはできるのでしょうか。また取引銀行以外の口座へ給与を振り込む際、従業員の承諾を得た上で、振込手数料を徴収することはできるのでしょうか。

 労働基準法第24条により、賃金は、通貨(現金)で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないと定められています。ただし、労働者の同意を得た場合は、労働者が指定する金融機関へ振込により支払うことができます(労働基準法施行規則第7条の2の1)。

 給与振込口座の指定は、会社ではなく労働者側に選択権があり、労働者が同意した場合は、会社の取引銀行に給与振込口座を開設してもらうことは可能ですが、同意がない場合には、労働者が指定する金融機関へ振り込むこととなります。


 振込手数料については、徴収することは不可能ではありませんが、振込手数料は会社都合による運営上の事務経費といえ、望ましくありません(現金で支払うことの事務負担の軽減が目的としてあります)。

 徴収する場合は、徴収が労働者の自由な意思に基づいてることが求められ、賃金から控除する場合は、会社と労働者代表との間で賃金控除協定の締結が必要です。自由な意思に基づいて徴収されることに同意しているかどうかは、客観的に明らかにすることが困難であり、先に述べたとおり、振込手数料は会社が負担することが妥当です。

2025年2月5日

■労働基準法

(賃金の支払)

第二十四条 通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことが出来る。

② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りではない。

■労働基準法施行規則

第七条の二 使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について次の方法によることができる。ただし、第三号に掲げる方法による場合には、当該労働者が第一号又は第二号に掲げる方法による賃金の支払を選択することができるようにするとともに、当該労働者に対し、第三号イからへまでに掲げる要件に関する事項について説明した上で、当該労働者の同意を得なければならない。

一 当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み

■民法

(弁済の費用)

第485条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。

以下略

更新日:2025年02月07日
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