労務管理事例集

労基法その他労働法

スポットワーク活用時の労働契約や労務管理上の注意点があれば教えてください。当社では、繁忙期や急な欠員対応のため、短時間に単発で働ける「スポットワーク」の活用を検討しています。アプリを通じて求人を出し、応募があれば先着順で就労が決まる仕組みを利用しようと考えています

 スポットワークは柔軟な人材確保が可能な一方、労働基準法などの適用を受ける「労働契約」であることに変わりはありません。「一時的な人材確保」という側面だけでなく、労働契約上の義務をともなう点に留意する必要があります。制度を正しく理解し、事前にルールを整えておくことで、トラブル防止と円滑な運用が可能となります。


 法的な原則と実務のポイントは以下のとおりです。


1.労働契約の成立時期

面接等を経ずにマッチングが成立するケースでは、応募時点で労使の合意が成立し、労働契約が成立すると一般的に考えられます。そのため、スポットワーカーとスポットワーク仲介事業者が労働契約を結ぶものではありません。

2.労働条件の変更

一度確定した勤務日や労働時間を変更する場合は、労使双方の合意が必要です。民法上、契約期間の定めのある労働契約については、労使間で特段の合意がない場合は、やむを得ない事由(天災事変等)がある場合を除き、労働契約成立後に解約することはできません。

3.労働契約成立後の解約(いわゆる「キャンセル」)

あらかじめ事由や期限を定めた「解約権留保付労働契約」として締結する必要があり、①解約事由が合理的であること、②労働者に一方的に不利にならない内容であること(労働契約法第3条第1項の労使対等の原則に沿うこと)に注意が必要です。例えば、事業主の都合で仕事を直前に解約することは、就労のためのスポットワーカーの準備を無駄にさせ、その日の別の就労機会を見つける時間的余裕がない状態に陥らせるおそれがあり、労働者保護の観点から不適切です。このため、事業主からの解約の期限については、別の就労機会を見つける時間的余裕に配慮した設定が求められます。

4.休業手当の支払い

事業主都合で休業や早上がりとなった場合には、労働基準法第26条に基づき休業手当の支払い義務が発生します。尚、休業手当の代わりに、その日に約束した賃金を全額支払うことで差し支えありません。休業手当を支払う場合であっても、事業主自身の故意、過失等により労働者を休業させることになった場合は、賃金を全額(休業手当を既に支払っている場合は当該手当を控除した額)支払う必要があります(民法第536条第2項)。

5.労働時間と労務管理

業務に必要な準備・後片付けの時間も労働時間に含まれます。求人時点で始業・終業時刻を明確にし、適切に管理しましょう。また、スポットワーカーの給与計算から給与振込まで仲介業者が行うときでも、労災保険料の算定や年末調整について雇用主が他従業員と同様に対象に含める必要があります。また、労災事故(通勤災害を含む)が発生したときは、自社の労災保険で対応します。さらに、スポットワーカーが業務に関することで相談できる窓口を伝えることも重要です。

2026年3月6日

労働契約法第3条(労働契約の原則)

第1項 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

第2項 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

第3項 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

第4項 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

第5項 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

更新日:2026年03月20日
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