労務管理事例集

その他労務相談

当社では、残業を行う場合に「事前申請・事前承認制」を導入しています。しかし、申請せずに残業してしまう従業員がいます。 ・残業申請は否認してよいのでしょうか? ・否認した時間について、残業代を払わなくてよいのでしょうか? ・従業員が勝手に会社に残っていた時間は労働時間に入るのでしょうか? この点について教えてください。

 残業の事前申請・承認制そのものは導入可能で、申請を否認することも制度上はできます。しかし、申請の有無・承認の有無と、残業代支払い義務は別の問題であり、会社が(明示または黙示に)労務提供を受け、「指揮命令下の労働時間」と評価される実態があれば、原則として未承認でも残業代を支払う必要があります。

 一方で、従業員が会社に残っていた時間がすべて自動的に労働時間になるわけではありません。ポイントは、その時間が会社の指揮命令下に置かれていたと評価できるかです。

 例えば、上司が居残りを把握していながら止めず、業務を進めることを容認していた場合や、定時内では終わらない業務量・納期で実質的に残業が不可避だった場合、あるいはその時間に作成した成果物を会社が受領・利用している場合には、申請の有無にかかわらず「黙示の指揮命令」があったとして、労働時間と判断される可能性が高くなります。

 これに対し、会社が残業禁止や承認ルールを明確に周知し、残業をさせないために帰宅指示・注意指導を継続するだけでなく、PCログオフや入退館管理などの実効性ある措置を講じ、会社として労務提供を受領していない(成果物も利用していない)などの事情がそろう場合には、例外的に「指揮命令下ではない」として、当該時間が労働時間に当たらないと判断される余地があります。

2026年3月9日

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29.1.20 基発0120第3号)

(3)自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

上記(2)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、

使用者は次の措置を講ずること。

ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。

オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる 36 協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

更新日:2026年04月17日
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