労務管理事例集

労基法その他労働法

当社では正社員とパートタイマーが同じ店舗で働いています。先日、パートタイマーから「同じ仕事をしているのに、正社員には賞与や通勤手当が支給され、自分には支給されないのはなぜか、説明してほしい」と求められました。会社はどこまで説明する必要がありますか。また、こうした待遇差を設けること自体は認められるのでしょうか

 求めがあった場合、事業主には待遇差の内容と理由を説明する義務があります(パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項)。一方、待遇に差を設けること自体が一律に禁止されているわけではなく、職務の内容や人材活用の仕組み(職務の内容及び配置の変更の範囲)の違いに見合った待遇差は認められますが、不合理と認められる差は禁止されています。なお、令和8年10月1日から、明示事項や説明の方法などのルールが改正されます。

 まず説明義務です。比較の対象となるのは、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等が最も近いと事業主が判断する正社員(通常の労働者)です。説明すべき内容は、①比較の対象として選んだ正社員とその選定理由、②待遇の相違の内容(待遇の基準の違いの有無、個別の待遇の内容又は基準)、③相違の理由の3点です。説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをすることは禁止されています(法第14条第3項)。

 次に、待遇差の適否です。不合理か否かは、待遇ごとに、その性質・目的に照らして判断されます(法第8条)。正社員とパートタイマーをひとくくりに比較するのではなく、賞与は賞与、通勤手当は通勤手当ごとに、その目的に照らして判断する点がポイントです。通勤手当は、同一労働同一賃金ガイドラインにおいて、パートタイマーにも正社員と同一の支給が必要とされており、勤務形態の違いだけを理由に不支給とすることは不合理と判断されやすい手当です。一方、賞与や退職金は、支給目的や職務内容・配置変更の範囲の違いを踏まえ、差を設けることが直ちに不合理とまではいえないとされた裁判例もあります(大阪医科薬科大学事件・メトロコマース事件 最高裁令和2年10月13日判決)。ただし、これらはいずれも当該事案の事情の下での判断であり、賞与や退職金に差を設けることが一般に許容されるという趣旨ではありません。各社の制度趣旨に照らした個別の判断になります。

 また、職務の内容と人材活用の仕組みがいずれも正社員と同一と認められるパートタイマーについては、待遇について差別的取扱いをすることが禁止されます(法第9条。均等待遇)。この場合は「均衡」ではなく「均等(同一)」が求められますので、自社のパートタイマーがこれに該当しないかも確認が必要です。

 なお、令和8年10月1日から次の3点が改正されます。第一に、雇入れ時(労働契約の更新時を含みます。)の文書等による明示事項に、「待遇の相違の内容・理由等の説明を求めることができる旨」が追加されます。第二に、同一労働同一賃金ガイドラインが改正され、賞与、退職手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇等の考え方が明確化されます。家族手当は相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイマーに、住宅手当は正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパートタイマーに、それぞれ同一の支給が必要とされ、夏季冬季休暇も同一の付与が必要とされます。第三に、説明の方法が、「資料を活用し口頭により説明する方法」又は「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかによることとされます。

 なお、無期雇用のフルタイム労働者はパートタイム・有期雇用労働法の適用対象ではありませんが、改正後の指針では、労働契約は均衡を考慮して締結されるべきものであることから、その均衡を考慮するに当たっては指針の趣旨も踏まえるべきである旨が新たに示されています。

 説明を尽くさない場合は、都道府県労働局長による報告の徴収、助言、指導又は勧告の対象となります(法第18条第1項)。10月の施行に向けて、労働条件通知書、賃金規程及び説明用資料の点検をお勧めします。

2026年8月12日


※本記事は令和8年10月1日の改正法施行前に作成したものです。同日以後にお読みの場合は、改正内容は施行済みのものとして読み替えてください。

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

第8条(不合理な待遇の禁止)

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

第9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)

事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

第14条第2項(事業主が講ずる措置の内容等の説明)=事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに法第6条から第13条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該労働者に説明しなければならない。同条第3項は、説明を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止している。

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(同一労働同一賃金ガイドライン)=待遇ごとの原則となる考え方と具体例を示す。令和8年10月1日から改正後の指針が適用され、賞与、退職手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇等の考え方が明確化される。

大阪医科薬科大学事件・メトロコマース事件(最高裁令和2年10月13日判決)=賞与及び退職金の相違について、職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲等の違いを踏まえ、不合理であるとまでは評価できないと判断。


更新日:2026年08月31日
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