労務管理事例集

安全衛生

雇入れ時の健康診断は、いつまでに実施する必要がありますか。また、他の従業員の定期健康診断とともに健康診断を実施することで、雇入れ時の健康診断を省略することは可能でしょうか。

 雇入れ時の健康診断の実施時期については、雇入れ時の直前又は直後とされていますが、具体的な期限までは明確にされていません。しかしながら、従業員が雇入れ前3ヶ月以内に受けた健康診断の結果を提出する場合は、雇入れ時の健康診断に相当する項目については省略することができることや、雇入れ時の健康診断の目的が、従業員を雇い入れた際における適正配置、入社後の健康管理に資するための健康診断であることを鑑みると、雇入れの前後3ヶ月以内の実施が望ましいと考えられます。

 また、雇入れ時の健康診断は、一部の項目を省略できる定期健康診断と違い、すべての項目について健康診断を行う必要があります。そのため、他の従業員の定期健康診断の実施時期が、雇入れの直前又は直後であったとしても、定期健康診断の項目が省略されている場合は、雇入れ時の健康診断を実施したことにはなりません。

 なお、雇入れ時の健康診断を実施した場合、実施後1年間は定期健康診断を省略することができます。


 雇入れ時の健康診断について、①実施義務、②実施時期、②定期健康診断との関係は、次のようになっています。

①実施義務

 労働安全衛生規則第43条で、全11項目の実施が、事業主に義務づけられており、実施を省略することはできません。ただし、従業員が、医師による健康診断の結果(3ヶ月以内に実施したのもの)を提出した場合、雇入れ時の健康診断に相当する項目については省略することができます。

②実施時期

 通達(昭23.1.16基発第83号、昭33.2.13基発第90号)では「雇入れの際とは、雇入れの直前又は直後をいうこと」と解釈されています。

③定期健康診断との関係

 労働安全衛生規則第44条第3項により、雇入れ時の健康診断を実施した場合、実施後1年間は、定期健康診断を省略することができます。

2019年2月18日 社会保険労務士 安田 尚美

【労働安全衛生規則第43条】

(雇入時の健康診断)

事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

1 既往歴及び業務歴の調査

2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(1000Hz及び4000Hzの音に係る聴力)の検査

4 胸部エックス線検査

5 血圧の測定

6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)

7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)

8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)

9 血糖検査

10 尿検査(尿中の糖、蛋たん白の有無)

11 心電図検査


【通達】雇い入れの際とは、雇入れの直前又は直後をいうこと。(昭23.1.16基発第83号、昭33.2.13 基発第90号)


雇入れ時の健康診断は、常時使用する労働者を雇い入れた際における適正配置、入社後の健康管理に資するための健康診断であること。(平5.4.26 事務連絡)


【労働安全衛生規則第44条第1項、3項】

(定期健康診断)

事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定(特定業務に従事)する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目(第43条の項目第1~11号に同じ)について医師による健康診断を行わなければならない。

(~中略~)

3 第1項の健康診断は、前条(雇入れ時)、第45条の2(海外派遣者)又は法第66条第2項前段(有害業務)の健康診断を受けた者(前条ただし書に規定する書面を提出した者を含む。)については、当該健康診断の実施の日から1年間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができる。

(~後略~)

更新日:2019年02月18日
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